社内の分厚いPDFをAIに読ませたのに、見当違いの答えが返ってくる。そんな経験、ありませんか。
原因の多くは「AIの頭の悪さ」ではありません。資料の探し方のほうです。
今日は、その探し方を根本から変えた「PageIndex」というしくみを紹介します。日本語の情報がまだ少ないので、公式の資料をもとに要点だけまとめました。
※この記事は、開発元VectifyAIが公開している公式ドキュメントとGitHubの記載をもとに書いています。編集部で実際にシステムを構築して試したものではありません。
まず、2026年9月時点の状況から
この記事の初出は2025年9月です。その後1年で、けっこう変わりました。
※2026年9月追記:公式GitHubによると、PageIndexはスター数35,000超のプロジェクトに育っています。2026年8月にはpip install -U pageindexで入るSDKが公開され、自分のパソコンの中だけで動かす「ローカルモード」が使えるようになりました。初出時に「弱点」として書いた「1つのファイルしか検索できない」という制限も、複数文書をまたぐ仕組み(PageIndex File System)で解消されています。ただしこの機能はクラウド版だけです。
そもそもPageIndexって何をするもの?
結論から言うと、「AIが本の目次をたどって、答えのありそうな章を開く」しくみです。
今までのAI検索(ベクトル検索と呼びます。文章を数字に置き換えて、似たものを探す方法です)は、資料を細かく切り刻んでから探します。
ここが問題でした。切り刻むと、前後のつながりが消えるんです。
公式サイトはこう説明しています。似ていることと、答えとして正しいことは別物だ、と。「純利益」という同じ言葉でも、前年比の話なのか事業別の話なのかは、前後を読まないと分かりません。
PageIndexのやり方は違います。
- 資料を目次の形に変える:章・節・項の階層を、そのまま木の形にします
- AIが目次を見て考える:「この質問なら第3章の経営成績かな」と当たりをつけます
- その章だけ開いて読む:全部は読みません
人が分厚い報告書を調べるときと、まったく同じ手順ですよね。着想の元は囲碁AIのAlphaGoだそうです。
今までのやり方と、何が違うのか
| 今までのベクトル検索 | PageIndex | |
|---|---|---|
| 探す単位 | 決まった長さで切った断片 | もとの章・節のまま |
| 探し方 | 似ているものを機械的に | 目次を見てAIが考える |
| 根拠 | なぜその答えか追いにくい | どの章を見たか残る |
※公式GitHubの比較表をもとに、日本語で要点だけ並べ直しました
公式が出している数字を見てみる
数字はすべて開発元の公表値です。第三者の検証ではない点だけ、頭の隅に置いておいてください。
- 正答率:金融文書の問題集「FinanceBench」で98.7%。同じテストでベクトル検索は50%だったと公表されています
- 目次を作る費用:1ページあたり約0.001ドル。1,000ページの資料でも1ドルちょっとです
- かかる時間:9ページから1,098ページまでの9件で、13秒から4分半
- 質問1回あたりの費用:PDFを丸ごとAIに渡す方法と比べると、52ページで2.1倍、420ページで16.6倍の差がついたそうです(渡すほうが高い)
1,000ページの資料の目次作りが1ドル。缶コーヒー1本より安いんだよね。しかも1回作れば、あとは何度質問しても使い回せます。
名古屋の中小企業なら、どこで効くか
ここが本題です。「RAGの精度」と言われてもピンと来ないので、うちの周りの仕事に翻訳します。
相性がいいのは、「分厚くて、章立てがしっかりしている書類」。具体的にはこのあたりです。
- 補助金の公募要領:100ページ超のPDFで、しかも毎年改訂される。「うちの設備は対象か」を探すのに半日消える書類の代表格
- 就業規則と給与規程:条文番号があるので、目次の形にしやすい
- 設備の取扱説明書・保守マニュアル:現場から「エラーコードE43って何」と聞かれたとき
- 官公庁の入札仕様書:どこに何が書いてあるか、毎回探し直している会社が多いはず
逆に、向いていない書類もはっきりしています。手書きのメモ、写真だらけの資料、章立てのない議事録。目次が作れないものは苦手です。無料版は文字が入ったPDF向けで、スキャンした紙の書類はクラウド版が必要になります。
で、うちは今から手を出すべき?
正直に言います。今のやり方で困っていないなら、急いで入れる必要はありません。
これは開発者向けの部品であって、買ってきてすぐ使える製品ではないからです。動かすには、Pythonが書ける人と、AIの利用料を払う準備がいります。
ただ、こういう相談を社内やベンダーから受けたときの判断材料としては、知っておく価値があると思っています。「AIに社内文書を読ませたい」という話が出たとき、選択肢がベクトル検索だけではない、と分かるからです。
見積書に「ベクトルデータベース構築費」が並んでいたら、一言聞いてみてください。「目次をたどる方式は検討しましたか」と。それだけで話の質が変わります。
まとめ
PageIndexは、AIに資料を「切り刻ませる」のではなく「目次から開かせる」しくみです。
分厚くて章立てのある書類ほど、効きます。逆に写真や手書きは苦手。ここさえ押さえておけば十分です。
今日すぐ何かする必要はありません。頭の片隅に置いておいて、社内でAI導入の話が出たときに思い出してもらえたら、それでいいと思います。


