【脱・ベクトル検索】RAGの常識を覆す「PageIndex」登場!AIが”目次”を読んで答えを探す新時代へ

「AIにもっと賢く、文脈を理解してほしい…」

RAG(Retrieval-Augmented Generation)の開発に携わるあなたなら、一度はそう感じたことがあるのではないでしょうか。

特に、金融レポートや法律文書のような、専門的でページ数も多い資料を扱うとき。ベクトル検索はとても便利ですが、細切れになった文章(チャンク)のせいで、本当に重要な前後の文脈が失われてしまうことがありますよね。

「チャンクサイズ、どう調整すればいいんだ…」 「なぜこの回答が出てきたのか、根拠が追いづらい…」

そんな開発者の深い悩みに、一つの答えが示されたかもしれません。

今回ご紹介するのは、VectifyAIが公開したReasoning-based RAGシステム「PageIndex」

この技術は、私たちが慣れ親しんだベクトル検索を一切使わない、全く新しいアプローチです。一言でいうなら、**「AIがまるで人間のように、目次をたどりながら文書を読み解き、答えの核心に迫っていく」**というもの。

この記事を読めば、あなたのRAG開発における長年の悩みが解決し、「AIはここまで進化したのか!」と未来への期待に胸が膨らむはずです。


PageIndexとは?- ベクトルDBもチャンキングも”不要”な理由

従来のRAGが、大量の付箋(チャンク)の中から関連性の高そうなものを**「感覚的に(類似度で)」**見つけ出す方法だとすれば、PageIndexは全く違います。

PageIndexは、文書全体を一つの大きな木(ツリー構造)として捉えます。それはまるで、本の「目次」のようなものです。

  1. 文書をツリー構造に変換: まず、金融レポートやマニュアルなどの長大な文書を、章・節・項といった階層的な「目次」のような構造に変換します。
  2. LLMが思考する: 質問が来ると、LLM(大規模言語モデル)は「この質問に答えるには、どの章のどの部分を見ればいいだろう?」と、目次に沿って推論し、探索を始めます。
  3. ピンポイントで情報へ: LLMは自らの推論に基づき、ツリーをたどって、文書内の最も関連性の高い箇所へ直接たどり着きます。

この仕組みのすごいところは、あのチェスの世界チャンピオンを破った「AlphaGo」に着想を得ている点。ツリーサーチという探索方法で、膨大な情報の中から最適な経路を見つけ出すのです。

これにより、開発者を悩ませてきたベクトルデータベースの構築や、最適なチャンクサイズを探る試行錯誤が、そもそも必要なくなるのです。


まるで優秀なアシスタント。精度が出なかった分析botが生まれ変わった話

ここで少し、私の(架空の)体験談をお話しさせてください。

私は以前、ある金融機関向けのAIアシスタント開発プロジェクトに携わっていました。そのAIの役割は、数百ページにも及ぶ年次報告書から、特定の経営指標に関する記述を正確に抜き出すこと。

しかし、従来のベクトル検索RAGでは、壁にぶつかっていました。

「純利益」という言葉は同じでも、ある文脈では前年度比の話、別の文脈では事業別の話…。細切れになったチャンクでは、その微妙なニュアンスを汲み取れず、AIは的外れな回答を繰り返していました。正直、途方に暮れていました。

そんな時、出会ったのが「PageIndex」です。

藁にもすがる思いで、公開されていたColabのノートブックを試してみました。すると、驚きの結果が。

「”純利益の増減要因”に関する質問だから、まずは”第3章 経営成績”を見て、次に”3.2 事業セグメント別の分析”を確認しよう」

まるで優秀なアシスタントのように、AIが思考の”経路”を示しながら、報告書を読み解いていくのです。そして、最終的にピンポイントで該当箇所を提示してくれました。

感動したのは、そのプロセスの透明性です。なぜその回答に至ったのかが手に取るようにわかるため、デバッグも非常に簡単でした。あの面倒だったチャンキング作業から解放された喜びも、言うまでもありません。

このPageIndexとの出会いは、「AIに仕事をさせる」という感覚から、**「AIという賢いパートナーと共に問題解決にあたる」**という新しい感覚を私に与えてくれました。

もし、あなたがAIの”ブラックボックス性”に少しでもやりにくさを感じているなら、この感動をぜひ味わってみてほしいです。


客観的な評価は?- 専門分野で驚異のスコアを記録

私の体験談だけでは、信じがたいかもしれませんね。

しかし、PageIndexはその実力を客観的な数値でも証明しています。金融文書の分析能力を測るベンチマークテスト**「FinanceBench」において、なんと98.7%という驚異的なスコア**を記録。

これは、専門家レベルの読解力が必要なタスクで、ほとんどミスなく回答できることを意味します。

まだ新しい技術のため、一般ユーザーの口コミは少ないですが、この実績だけでも、専門家の間で注目が集まっている理由がわかるはずです。


PageIndexのメリット・デメリット

どんな技術にも、良い面とそうでない面があります。ここでは、正直に両方をお伝えします。

デメリット(先に知っておくべきこと)

  • 現状は「単一の文書」にしか対応していない 現在、PageIndexが一度に検索できるのは、一つのファイルのみです。複数の報告書を横断して検索する、といった使い方はまだできません。

【フォロー】 しかし、これは大きな問題ではないかもしれません。なぜなら、多くのシステムでは、まず対象となる文書を特定してから、その中身を検索するステップを踏むからです。前段の処理を挟めば、今のシステムにも十分に組み込めます。 また、公式も「複数文書への対応は近日予定」とアナウンスしており、このデメリットが解消される日も近いでしょう。

メリット(デメリットを補って余りある魅力)

  • ベクトルDB・チャンキングが不要 インデックス作成の手間やコスト、チューニングの工数を大幅に削減できます。開発者は、より本質的なロジックの実装に集中できます。
  • 文脈を失わない、圧倒的な検索精度 特に、構造化された長文(金融レポート、法律文書、技術マニュアル、学術教科書など)で、その真価を発揮します。
  • 検索プロセスの透明性 AIが「なぜ」その答えを選んだのか、その思考の道筋を追跡できます。これは、システムの信頼性を担保する上で非常に重要です。

こんなあなたにこそ、「PageIndex」を試してほしい

ここまでの話をまとめると、PageIndexは特に以下のような方におすすめです。

  • 従来のベクトル検索RAGの精度に限界を感じている開発者の方
  • 金融、法律、技術分野など、専門的で長大な文書を扱うAIを開発したい方
  • AIの回答の”根拠”を明確にし、システムの透明性を高めたい方
  • ベクトルDBの運用コストや、チャンキングの試行錯誤から解放されたい方

もし一つでも当てはまるなら、あなたはPageIndexを試す価値が大いにあります。この技術を知らずにRAG開発を続けるのは、ライバルが最新の自動運転車に乗っているのに、自分だけ古い地図を頼りに運転しているようなものかもしれません。


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