【原因はバグでした】最近Claudeの調子が悪かった本当の理由|Anthropic公式発表を分かりやすく解説

「あれ、最近Claudeの答えがイマイチだな…」 「なんだか前より賢くなくなった?」 「英語で質問したのに、たまに変な文字が混じる…」

もしあなたがClaudeを日常的に使っているなら、ここ1ヶ月ほど、こんな風に感じていたかもしれません。

その違和感、あなたの気のせいではありませんでした。

実は2025年の8月から9月にかけて、Claudeは3つの複雑なインフラ関連のバグに見舞われていたのです。

開発元であるAnthropic社は、この問題について異例とも言えるほど詳細な技術レポートを公開し、何が起こったのか、なぜ解決に時間がかかったのか、そして今後どう改善していくのかを包み隠さず説明しました。

この記事では、その公式発表の内容を誰にでも分かるように、そして「なぜこの一件で、むしろClaudeへの信頼が増したのか」という視点も交えて、徹底的に解説していきます。

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◆ あなたの「?」は正しかった。Claudeに起きていた静かな異常

多くのユーザーが感じていた品質の低下。それは「サーバーが混雑しているから」とか「AIの気まぐれ」といった曖昧なものではありませんでした。

Anthropic社はレポートの冒頭で、こう断言しています。

私たちは需要、時間帯、サーバー負荷を理由にモデルの品質を下げることは決してありません。ユーザーから報告された問題は、インフラのバグのみが原因でした。

つまり、私たちが感じていた性能の低下は、明確な「異常事態」だったのです。

では、一体どんな異常が起きていたのでしょうか?


◆ 犯人は3人いた!複雑に絡み合ったバグの正体

問題の原因は、1つではありませんでした。性質の異なる3つのバグが、まるで示し合わせたかのようにほぼ同時期に発生し、重なり合っていたのです。これが原因の特定を非常に難しくしました。

出典: Anthropic公式ブログ

一つずつ、何が起きていたのかを簡単に見ていきましょう。

バグ①:住所間違い!リクエストの「誤配送」エラー

  • いつから?: 8月5日から
  • 何が起きた?: 一部のリクエストが、本来送られるべきではない、まだ準備中の「100万トークン対応の超巨大サーバー」に間違って送られてしまう問題が発生しました。
  • 例えるなら: 短距離走の選手に、いきなり「さあ、フルマラソンを走ってください」と無茶振りしてしまうようなもの。専門外のタスクを振られたサーバーは、最適なパフォーマンスを発揮できず、結果として回答の品質が落ちてしまいました。
  • 厄介な点: このルーティングは「粘着性」があったため、一度間違ったサーバーに繋がると、その後のやり取りもずっと同じサーバーに送られ続け、特定のユーザーだけが「ずっと調子が悪い」と感じる原因になりました。

バグ②:突然の文字化け!出力が「破損」するエラー

  • いつから?: 8月25日から
  • 何が起きた?: AIが言葉を生成する過程で、ある最適化の設定ミスにより、通常ではありえない単語(トークン)が選ばれてしまうエラーが発生しました。
  • 例えるなら: 真剣なプレゼンの途中で、プレゼンターが突然「สวัสดี(サワディー)」とタイ語で挨拶を挟んでしまうようなもの。英語のプロンプトに対して、文脈と無関係なタイ語や中国語が混じったり、コードに明らかな構文エラーが生まれたりしました。

バグ③:計算ミス!コンパイラの「潜在的」なバグ

  • いつから?: 8月25日から
  • 何が起きた?: AIが次にどの単語を選ぶか計算する際、計算の「翻訳者」であるコンパイラ(XLA:TPU)に潜んでいたバグが作動してしまいました。
  • 例えるなら: 非常に優秀な計算機が、特定の条件下でのみ、なぜか最も重要な数字を見落として計算してしまうようなもの。これにより、AIは最適とは言えない単語を選んでしまい、回答全体の質が低下しました。

これらの問題が複雑に絡み合い、あるユーザーは大丈夫なのに、別のユーザーは深刻な問題を経験するという、混乱した状況を生み出していたのです。


◆ なぜ発見が遅れたのか?Anthropicが語る「正直な反省点」

これだけの問題が起きていたのに、なぜすぐに見つけられなかったのでしょうか? Anthropic社は、その理由も正直に明かしています。

  • デメリット①:社内の評価システムが問題を捉えきれなかった
    • 通常の品質チェックでは、今回のような「特定の条件下で稀に発生する」バグを検出することができませんでした。AIは多少の間違いがあっても、うまく自分で話を修正してしまうため、評価スコア上は問題が見えにくかったのです。
  • デメリット②:ユーザーのプライバシー保護が調査を難しくした
    • Anthropicはユーザーのプライバシーを非常に重視しており、エンジニアがユーザーの会話履歴を自由に閲覧することは固く禁じられています。これは素晴らしいことですが、一方で「どんなやり取りでバグが発生したのか」を具体的に再現するのが難しく、調査の壁になっていました。

これらの反省点は、私たちユーザーにとっては、むしろポジティブに捉えることができます。 社内の評価システムが不十分だったことを認めて改善を約束し、何よりも私たちのプライバシーを優先する姿勢を貫いてくれた。この誠実さこそ、私たちがClaudeを信頼できる大きな理由ではないでしょうか。


◆ 【改善策】同じ過ちを繰り返さないための「4つの約束」

反省だけでは意味がありません。Anthropicは、具体的な再発防止策を打ち出しています。

  1. より高感度な評価を: 今回のような微妙な品質低下も検知できる、新しい評価システムを開発・導入します。
  2. 本番環境での常時監視: テスト環境だけでなく、私たちが実際に使っている本番のシステムでも、常に品質評価を実行し続けます。
  3. 高速なデバッグツール: ユーザーのプライバシーを守りながら、バグの報告を迅速に調査・修正できる新しいツールを開発します。
  4. ユーザーからのフィードバック: 今回、問題解決の大きな手がかりとなったのは、ユーザーからの「おかしい」という声でした。今後もフィードバックを重視し、迅速に対応できる体制を強化します。

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◆ まとめ:嵐を乗り越え、Claudeはさらに強くなった

今回の出来事は、AIというテクノロジーがいかに繊細なバランスの上に成り立っているかを教えてくれました。そして同時に、開発元であるAnthropicがいかにユーザーに対して誠実な企業であるかを示してくれたと思います。

失敗を隠すのではなく、技術的な詳細まで包み隠さず公開し、原因を分析し、具体的な改善策を約束する。この透明性の高い姿勢は、他のどんなAIサービスにも勝る、Claudeの大きな強みと言えるでしょう。

もし、最近の不調でClaudeから少し離れてしまっていたなら、全てのバグが修正された今こそ、もう一度試してみる絶好の機会です。

嵐を乗り越えて、より安定し、より賢くなったClaudeが、きっとあなたの期待に応えてくれるはずです。

さあ、進化したClaudeに、新しい質問を投げかけてみましょう!

さらに技術的な詳細が気になる方は、ぜひAnthropic社の公式レポート(英語)もご覧ください。エンジニアの奮闘が伝わってくる、非常に読み応えのある内容です。

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