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個人契約のChatGPTに会社の情報を入れる前に:公式ドキュメントで確認した「学習オフ」設定と、その限界

結論から書きます。個人プランのChatGPTでも「入力を学習に使わせない」設定はできます。OpenAIの公式ヘルプに手順が載っています。ただ、その設定をオンにしたことは、会社の情報を入れていい理由にはなりません。問題は学習ではなく、記録がどこに残り、誰が追えるかのほうにあるからです。

きっかけは今朝の記事、でも本題はその先にある

ITmediaが今朝、個人で契約したChatGPTに、会社の情報を入力していいの?(ITmedia NEWS・IT知恵袋)という初心者向け解説を出しました。要点は3つです。個人向けプランでは入力が学習に使われうること、企業向けプランなら学習させない取り決めができること、そして会社に隠れて個人契約のサービスを使う「シャドーAI」は情報セキュリティ上避けるべきだということ。

ここまでは正しいのですが、実務で迷うのはその先です。「じゃあ設定をオフにすれば個人プランでもいいのか」「そもそも自分のは今どうなっているのか」。ここは一次資料まで降りないと分かりません。OpenAIの公式ドキュメントを実際に開いて確認しました。

一次資料で確認:個人プランで学習をオフにする手順

OpenAIのData Controls FAQ(OpenAI Help Center)に、設定場所がそのまま書かれています。

  • Web(ログイン時):プロフィールアイコン → Settings → Data Controls → 「Improve the model for everyone」をオフ
  • モバイル:サイドバー → プロフィールアイコン → Data Controls → 同じ項目をオフ

この設定はアカウント単位で同期します。スマホでオフにすればPCにも効くので、端末ごとにやり直す必要はありません。変更にも制限はなく、いつでも切り替えられます。

そして、ここが読み飛ばされがちな一文です。FAQには「会話は履歴には残るが、学習には使われない」と明記されています。学習オフは、削除ではありません。入力したものはOpenAI側のシステムに保存されたままです。

もう少し踏み込むなら「Temporary Chat(一時チャット)」があります。公式によれば、一時チャットは30日でシステムから削除され、学習には使われず、履歴にもメモリにも残りません。ただし不正利用の監視目的でのみ確認される場合があるとも書かれています。完全な密室ではない、という理解が正確です。

個人プランと企業向けプランは、何がどう違うのか

OpenAIのエンタープライズプライバシー(2026年1月8日更新)と先のFAQを突き合わせると、差はこう整理できます。

観点 個人プラン(Free/Plus/Pro) Business / Enterprise
モデル学習 既定はオン。自分でオフにする必要がある 既定でオフ(明示的に同意した場合のみ利用)
データ保持期間 ユーザー側で期間設定はできない ワークスペース管理者が設定可能
利用状況の追跡 会社からは見えない 管理者が会話履歴の閲覧・エクスポート・削除が可能(Enterpriseは監査ログAPIあり)
認証・権限 個人アカウントのみ SAML SSO、機能単位のアクセス制御
第三者監査 SOC 2 Type 2 監査済み、DPA締結可

本当に効いているのは、学習の行ではなく「追跡」の行です。企業向けプランの価値は、AIが賢くならないことではなく、何かあったときに誰がいつ何を入れたかを会社が確認できる点にあります。裏を返せば、Businessを使うのは自分の会話が管理者に見える状態を受け入れることでもある。導入側がここを黙って進めると、現場の不信を買います。

【独自】設定では消えない、3つの残りもの

学習をオフにしても手つかずで残る問題を、順に挙げます。

1. 事故が起きたとき、調べようがない

個人契約は会社の管理外にあるので、監査ログが存在しません。「あの見積書、AIに投げたっけ?」を後から確認する手段がゼロです。漏えいそのものより、漏えいしたかどうか分からない状態のほうが対外的にはきつい。取引先への説明が「たぶん大丈夫です」で終わってしまいます。

2. 秘密保持契約との関係が宙に浮く

受託仕事の契約書には、第三者への開示や再委託の条項があるはずです。個人契約のクラウドに顧客データを入れる行為がそこに触れるかは契約次第で、「AIはツールだからセーフ」と自己判断するのは危ういところ。金額が大きい案件ほど、先に取引先へ一本確認を入れたほうが早い。聞いて怒られたことは、少なくとも私は一度もありません。

3. 「ファイルごと投げる」癖のほうが本丸

実際の事故は、機密を打ち込もうと決意して起きるより、手元のExcelをそのままドラッグして投げたときに起きます。要約させたかったのは1シートなのに、隣のシートに単価表と個人名が入っていた、という形です。設定画面をいくらいじっても、この癖は直りません。

【独自】ひとり社長・フリーランスの線引き(30秒でできる形にする)

大企業の情シスがない立場だと、ルールは自分で作るしかありません。私は3分類で運用しています。

  • そのまま入れる:公開情報、自分の頭の中にあるだけの構想、一般的な技術の相談
  • 加工して入れる:顧客の案件相談。会社名は「A社」、担当者は「担当者B」、金額はレンジ(120万円→100万円台)、日付は月まで
  • 入れない:個人情報を含む名簿、見積書や契約書のファイルそのもの、認証情報

正直に言うと、最初のうちは置き換えが面倒で何度もサボりました。続くようになったのは、よく使う置換の対応表をメモアプリに1枚作ってからです。案件名と社名を貼り付けて置換するだけなら30秒で終わります。判断を毎回やり直すからしんどいのであって、作業に落とすと続きます。

逆の既定解:まず確認すべきは、設定ではなく契約

ここまで書いておいてなんですが、会社がすでにChatGPT BusinessやEnterpriseを配っているなら、この記事の作業はほぼ不要です。既定で学習に使われませんし、管理も会社側にあります。やるべきは個人アカウントの設定変更ではなく、配られたアカウントを使うことだけです。

逆に、会社にAIのルールが何もない場合。ここでいきなり「禁止」にすると、ITmediaの記事が指すシャドーAIが水面下で増えるだけで、状況は悪化します。順番としては、禁止でも解禁でもなく、「何を入れてよく、判断に迷ったら誰に聞くか」を1枚決めるのが先です。線引きが示されていない現場は、勝手に使うか、萎縮して使わないかの二択になります。どちらも損です。

まとめ

  • 個人プランでも学習オフは可能。Settings → Data Controls → 「Improve the model for everyone」をオフ(アカウント単位で同期)
  • ただし学習オフ=削除ではない。履歴は残る。消したいなら一時チャット(30日で削除・不正利用監視の対象にはなる)
  • 企業向けプランの本質的な価値は既定の非学習より追跡できること。個人契約は事故の調査ができない
  • 設定より効くのは運用。社名・氏名・金額の置換テンプレを1枚作れば、判断コストは30秒まで下がる

設定を変えるのは3分で終わります。そのあとに残る「どこまで入れるか」のほうが本番で、こちらは一度決めて紙に書いておかないと、忙しい日に必ず崩れます。

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