「AIに頼んだら、それっぽいけど使えない答えが返ってきた」。仕事でAIを使い始めた人が、最初につまずくのがここです。原因はAIの賢さより、頼み方のほうにあることが多いんです。この記事では、会議の準備やメールの下書きなど、毎日の仕事をAIに任せるときにそのまま使える頼み方の型を5つ紹介します。読み終わるころには、明日の朝そのまま試せる頼み方が手元に残るはずです。
※この記事は2026年4月公開時点の内容を、2026年10月に全面的に見直しました(根拠を示せない記述を削除し、公式ガイドの考え方と図解を追加)。

AIは「優秀だけど、うちの事情を知らない新人」
AIは、仕事はできるけれど、あなたの会社の事情はまだ何も知らない新人さん。そう考えると、頼み方が見えてきます。
新人さんに「来週の会議の資料、いい感じにまとめといて」とだけ言っても、いい資料は出てきませんよね。誰が出る会議か、何を決めたいのか、手元にどんな材料があるのか。それを伝えて、はじめて仕事になります。AIもまったく同じです。
このたとえは、AIの開発元のひとつAnthropicの公式の手引きにも載っています。手引きはAIを「優秀だが、あなたの規範やワークフローに関するコンテキストを持たない新入社員」と考えるよう勧めていて、望むことを正確に説明するほど結果は良くなる、としています。もうひとつ分かりやすい物差しも載っています。その頼み方を、事情を知らない同僚に見せてみる。同僚が混乱するなら、AIも混乱する、というものです。
出典:プロンプティングのベストプラクティス(Claude Platform Docs)
頼む前にそろえる4つ
上の図の4つを、頼むたびに1行ずつ書くだけで、返ってくる答えはぐっと使えるものになります。
- 自分の立場:「総務を1人で回している」「営業で、相手は初めての取引先」など
- 目的と相手:誰が読むのか、読んだ人に何をしてほしいのか
- 材料:メモ、前回の資料、数字。ただし、入れてはいけない情報は先に外す(下で説明します)
- 欲しい形:箇条書きか表か、何文字くらいか、何案ほしいか
ここからは、この4つを組み込んだ型を5つ紹介します。[ ]の部分を自分の仕事に置き換えて使ってください。
そのまま使える頼み方の型5つ
1. 会議の準備を任せる
アジェンダと想定問答のたたき台を作ってもらう型です。中身を決めるのは自分、形にするのはAI、と分けるのがコツです。
【会議準備】
私は[役職]です。[日付]に[会議テーマ]の会議があります。
参加者:[参加者の役割。個人名は入れない]
目的:[この会議で決めたいこと]
事前情報:[背景や資料の要点]
次の3つを作ってください。
1. 60分の会議アジェンダ(時間配分つき)
2. 各議題の背景説明(各3行以内)
3. 出そうな質問と回答案を5つ
2. メールや報告書の下書き
決まった形の文章は、AIが得意な仕事です。最後の1行で「相手に次に何をしてほしいか」を書かせると、読んだ人が動きやすい文になります。
【ビジネス文書の下書き】
次の情報をもとに[メール/報告書/提案書]の下書きを作ってください。
送る相手:[相手の立場・こちらとの関係]
目的:[伝えたいこと・お願いしたいこと]
トーン:[丁寧/くだけた/かしこまった]
背景:[関係する事実・経緯]
長さ:[○○字以内]
最後に、相手が次にとってほしい行動を1文で明記してください。
3. 表のデータから気づきを出してもらう
売上や件数の表を貼って、傾向と気になる点を挙げてもらう型です。ただし、AIは計算や読み取りを間違えることがあります。出てきた数字は、元の表と必ず突き合わせてください。結論を会議に出す前に、自分の目で1回見る。ここは手放さないほうが安全です。
【データの読み取り】
次の表を見て、気づいたことを挙げてください。
[表を貼り付け。氏名・住所・電話番号・顧客番号など、誰のことか分かる列は消しておく]
知りたいこと:
1. 目立つ傾向(3つまで)
2. 前の月・前の年と比べて大きく変わった点
3. 気になる数字(異常に見える値)
4. 次に打てそうな手を3つ
読む人:[社長/現場の担当者]向けに[○○字]以内で。
計算した数字には、どの行・列から出したかを添えてください。
4. SNS投稿を1週間分まとめて考える
毎日のネタ探しを、週に1回のまとめ作業に変える型です。出てきた案はそのまま流さず、自分の言葉に直してから投稿しましょう。AIの案が、ほかの人の投稿や記事とよく似ていないかも確認してください。似たものをそのまま出すと、著作権のトラブルになることがあります。
【SNS投稿の案出し】
私は[業種/テーマ]について発信しています。
読んでほしい人:[どんな人か]
トーン:[専門的/親しみやすい]
次のテーマで、1週間分(7本)のX投稿の案を作ってください。
テーマ:[今週取り上げたい話題を3〜5個]
条件:各140字以内、ハッシュタグは2個まで、最後は読者への問いかけで終える
5. 仕事の手順書を作る
いつも自分がやっている作業を箇条書きで伝えて、新しく入った人向けの手順書に整えてもらう型です。小さな会社ほど「あの人しか知らない仕事」が多いので、効き目が大きい使い方です。
【手順書づくり】
次の仕事の手順書を作ってください。
仕事の名前:[作業名]
読む人:[経験の長さ・得意不得意]
手順のあらすじ:
1. [ステップ1]
2. [ステップ2]
(続く)
次の3つも入れてください。
- 各ステップの注意点
- よくあるミスと直し方
- 最後に確認するチェックリスト
任せる前に決めておきたい「入れない情報」
頼み方が上手になるほど、つい何でも貼り付けたくなります。でも、ここは先に線を引いておきましょう。顧客の名前・住所・電話番号・顧客番号、社員の情報、パスワード、取引先との契約で外に出せない情報は、AIに入れないのが基本です。
ツールによっては「入力した内容を学習に使わない」設定がありますが、それは何を入れてもいいという許可ではありません。使うサービスの利用規約やプライバシーポリシーも一度確認しておきましょう。社内に決まりがあればそれに従い、なければ「入れない情報」を1行だけでも書いて、使う人全員で共有しておくと安心です。個人情報の扱いで迷う場面は、個人情報保護委員会の案内や専門家に確認してください。
うまくいかないときは、1回で決めようとしない
最初の答えがいまいちでも、そこで終わりにしないでください。「3段落目を、具体的な数字を入れて書き直して」「全体をもう少しやわらかく」のように、直してほしい場所を指さすと、次の答えはかなり近づきます。
人に頼むときも、一度で完璧な資料が出てくることは少ないですよね。AIとのやり取りも、打ち合わせと同じくらいの気持ちで進めるのがちょうどいいと思います。
まとめ:まずは1つ、明日の仕事で
AIに仕事を任せるコツは、特別な呪文ではなく、新人さんに頼むときと同じ「立場・目的・材料・形」の4つを渡すことでした。
5つの型を全部試す必要はありません。明日いちばん面倒な仕事を1つ選んで、その型だけ使ってみてください。うまくいったら、その頼み方をメモに残しておく。それが、あなたの会社の小さな「AIの使い方マニュアル」の1ページ目になります。


