「生成AIを入れたのに、思ったほど仕事が楽になっていない」——そう感じている方に読んでほしい調査結果が出ました。
業務改善に最も効果があると思われている取り組みは「生成AIの活用」ではなく「業務フローの見直し」だった、というものです。この記事では調査の要点と、社員数十人規模の会社や個人事業主が明日から使える具体的な手順に翻訳して紹介します。
調査の要点:6割が「業務効率に不満」、改善は進んでいない
システム開発を手掛けるアスノシステムが2026年8月10日に発表した「仕事の生産性向上・業務改善に関する実態調査2026」によると、勤務先の業務効率について「あまり満足していない」が45.3%、「全く満足していない」が14.7%で、合計60.0%が不満を抱えているという結果でした。
そして本題の「業務改善を進める上で最も効果があると思う取り組み」は、次の順位です。
- 業務フローの見直し:23.3%(単独トップ)
- システム・ツールの導入:15.3%
- 生成AIの活用:14.7%
- 社内ルールの簡素化:14.0%
さらに注目したいのが、改善が進まない理由の1位です。「日々の業務が忙しく、改善に取り組む時間がない」(26.0%)を抑えて、「誰が改善を進めるのか明確でない」が27.0%で最多でした。改善したい業務としては「会議」27.7%、「資料作成」26.7%、「データ入力・定型作業」23.0%が上位に並びます。
出典:業務効率に「不満」6割 なのに最も効くのは「生成AI」でも「ツール」でもなかった(@IT)
なぜ「ツールより先にフロー」なのか
理屈はシンプルです。ムダな作業を自動化しても、ムダな作業が高速で回るだけだからです。
たとえば「誰も読んでいない週次報告書」をAIに書かせると、作成時間は10分から2分になります。数字の上では8分の改善ですが、そもそもその報告書をやめれば10分がまるごと消えます。ツールから入ると、この「やめる」という最も効く選択肢が検討されないまま固定化してしまう。調査で業務フローの見直しが1位になった背景には、こうした現場感覚があると考えられます。
【独自】小さな会社・個人事業主が1人で回す3ステップ
とはいえ「業務フローの見直し」は言葉が大きく、担当部署のない小さな組織では手が止まりがちです。調査の1位が「誰が進めるか不明」だったことを踏まえ、専任担当を置けない前提で回せる形に落とし込みました。
ステップ1:改善対象を探さず「やり直し」を3つ書き出す
「ムダな業務はどれか」と考えると手が止まります。代わりに、直近1週間で「やり直した作業」「探し物をした作業」「催促した作業」を3つだけ書き出してください。所要は5分です。やり直しと探し物は、フローが壊れている場所にほぼ確実に現れます。上の調査で「情報共有・情報検索」が21.3%で上位に来ているのも同じ現象です。
ステップ2:「決める人」を1行だけ決める
最大の障害は時間ではなく持ち主の不在でした。ここは制度を作る必要はなく、書き出した3件それぞれに「この件は私が決める」と名前を書くだけで足ります。決裁権の話ではなく、止まったときに動かす人を1人決めるという意味です。これを飛ばすと、良い案が出ても「誰かがやるだろう」で消えます。
ステップ3:フローを直してから、残った手作業だけAIに渡す
順番が肝心です。まず「その工程は必要か(やめられるか)」「順番を入れ替えられるか」「まとめられるか」を確認し、それでも残った手作業だけを生成AIやツールに渡します。この順番であれば、AIは「ムダの高速化装置」ではなく純粋な戦力になります。
生成AIの一番おいしい使いどころは「棚卸しの相手役」
実は、ステップ1〜2でこそAIが効きます。1人で考えると自分の思い込みから抜けられないためです。次のように投げると、自分では気づかない工程が出てきます。
私は【業種・職種】です。以下の作業について、①省略できる工程 ②順番を変えられる工程 ③まとめられる工程 を、それぞれ理由つきで挙げてください。前提が不足していれば先に質問してください。
作業手順:(自分のやり方を箇条書きで)
ポイントは「効率化して」と丸投げしないことです。省略・順番・統合という3つの観点を指定すると、一般論ではなく自分の手順に沿った指摘が返ってきます。最後の一文を足しておくと、前提を勝手に決めつけた回答も減ります。
見落としやすい落とし穴:空いた時間の行き先を先に決める
同調査では、効率化で生まれた時間を何に使いたいかという問いに対し、「本来注力すべき業務」と「休暇・プライベート」がともに28.3%で同率首位でした。
ここが実務上の要注意点です。行き先を決めずに時間を空けると、その枠はたいてい別の雑務で自然に埋まります。改善に着手する前に「空いた30分は新規の提案づくりに使う」「定時に上がる」と先に宣言しておくほうが、効果を実感しやすくなります。せっかくの改善が「気づけば前と同じ忙しさ」で終わるのを防げます。
ツール側も「使った量を見える化」する方向へ
関連する動きとして、マネーフォワードが8月17日、ChatGPTやClaudeなどの利用量とコストをダッシュボードで一元管理できる法人向けサービス「マネーフォワード クラウドAIトークン管理」の提供を始めました。マネーフォワードIDを取得すれば無料で使え、データはAPI連携やCSVで取り込みます。
出典:ChatGPTやClaudeの利用量とコストを一元管理、無料で使える法人向け新サービス マネーフォワード(ITmedia AI+)
部門ごとの契約が増えて「誰がどれだけ使っているか分からない」状態は、中小企業でも起こり始めています。ただし、これも順番は同じです。使用量が見えることと、業務が改善されることは別です。可視化はあくまで、フローを見直す材料が手に入るという位置づけで考えるのが安全でしょう。
まとめ
- 調査では業務改善に最も効くのは「業務フローの見直し」23.3%で、生成AIの活用14.7%を上回った
- 改善が進まない最大の理由は忙しさではなく「誰が進めるか不明」27.0%
- 手順は、①やり直し・探し物を3つ書き出す ②各件に「決める人」を書く ③残った手作業だけAIに渡す
- AIは自動化装置としてより、棚卸しの相手役として使うと1人でも回せる
- 空いた時間の行き先は、着手前に決めておく
今のやり方で特に困っていないのであれば、無理にツールを増やす必要はありません。気になるのは「やり直しが多い」と感じたときだけで十分です。その時こそ、ツールを探す前に手順を1枚の紙に書き出すところから始めてみてください。

