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生成AI「プリンシプル・コード」を使う側の目線で読む 自社が対象になる条件と照会窓口の使い方

政府が2026年8月に「プリンシプル・コード」を公表しました。生成AIの事業者に、学習データの開示と知財保護を求める文書です。

報道では「AIを作る側のルール」として扱われています。ただ原文を読むと、使う側に効く仕掛けのほうが実は多い。14ページを通して読んだうえで、非エンジニアの実務に必要な部分だけを抜き出します。

まず結論 多くの中小企業は「対象」ではない

正式名称は「生成AIの適切な利活用等に向けた知的財産の保護及び透明性に関するプリンシプル・コード」です。対象は生成AI開発者と生成AI提供者に限られます。

ここで手が止まる人が多いはずです。社内でチャットボットを作った会社は入るのか。原文には明快な答えがあります。

  • 自社の保有データだけで特化させたAIを、自社と指定した範囲にだけ提供する場合 → 対象外
  • 公衆に提供していない研究開発だけの段階 → 対象外
  • 生成物が統計データや推論結果にとどまり、他人の権利を侵す恐れが著しく低い場合 → 対象外

原文には法人A〜Lまで使った具体例が並びます。要するに「外部の不特定多数に売っているか」が分かれ目です。社内業務用のボットを1社に納品しているだけの受託会社も、原則として外れます。

逆に、汎用AIをベースに業界特化サービスを作って複数社へ売っているなら対象です。ただし求められるのは自社が付け足した部分だけ。土台の汎用モデルは元の開発元が担う前提になっています。

海外企業も逃げられません。日本国内に本店がなくても、日本向けに提供していれば適用されます。

使う側が手に入れた「照会の窓口」

ここからが本題です。この文書は原則3で、AIで何かを生成した本人に照会の権利を認めました。

想定されている場面はこうです。画像生成AIで作った絵が、後から他人の作品に似ていると気づいた。そのとき事業者に対して、そのサイトが学習データの取得元に入っていたかを尋ねられます。

照会に必要な材料は3つです。

  1. 生成物そのものと、生成に使ったプロンプト
  2. 回答の利用目的の明示と、目的外に使わない誓約
  3. 似ている作品が載っているURL

プロンプトの提出が必須になっている点は見落とされがちです。あとから「どう指示したか」を再現できないと、この窓口は使えません。仕事で画像生成AIを使うなら、プロンプトの保存を習慣にしておく価値があります。

注意点もあります。原則3の照会は、訴訟や調停に使う目的では申し込めません。誓約事項に明記されています。争うと決めた後ではなく、その手前の事実確認のための窓口だと理解しておくべきです。

権利者側には別に原則2が用意されています。こちらは法的手続を進めている人や、委任を受けた弁護士が対象です。自分の作品のURLを示して、クロール対象に入っていたかを尋ねられます。

法的拘束力はない それでも無意味だとは思わない

この文書には強制力がありません。原文自身が「法的拘束力を有する規範ではない」と書いています。営業秘密の強制開示も求めません。

採用されたのはコンプライ・オア・エクスプレインという方式です。原則を実施するか、実施しないならその理由を説明する。企業統治のスチュワードシップ・コードで使われてきた手法を持ち込んでいます。

「守らなくていいなら形だけでは」という反応は当然出ます。それでも効くと考える理由が1つあります。

受け入れた事業者は、自社サイトで表明したうえで内閣府の知的財産戦略推進事務局に届け出ます。事務局は届け出た事業者の一覧とリンクを公表します。つまり選ぶ側の判断材料が、1か所に集まる。

ただし事務局は届出の内容を審査しません。第三者からの照会にも回答しないと明記されています。一覧に載っている=政府のお墨付き、ではない点は誤解しやすいところです。

細則にある一文も面白い。利用規約でこの原則の適用を制限している場合、「規約にそう書いてあります」だけでは説明として不十分としています。なぜ制限するのかまで説明を求める。抜け道を先回りで塞いだ書きぶりです。

ツールを選ぶ側の実務 3つのチェック

名古屋の中小企業が生成AIツールを導入する場面に置き換えます。稟議や社内説明で使える確認事項は、この3つに絞れます。

1つ目。受入れを表明しているか。候補ツールの提供元サイトに表明があるかを見ます。無くても直ちに問題ではありません。ただ表明していれば、学習データの種類やクローラの情報が公開されているはずです。

2つ目。窓口があるか。原則1は、権利者の救済のための窓口整備と、申出要件の明確化を求めています。生成物の権利で揉めたとき、連絡先が分からない相手は避けたい。

3つ目。出所の技術的措置。電子透かしやC2PAといった、来歴を証明する仕組みへの対応状況です。制作物を納品する仕事なら、ここは後から効いてきます。

逆のことも書いておきます。今すぐ全社で何かを始める必要はありません。社内文書の要約や議事録の整理にAIを使っている段階なら、この文書の影響はほぼゼロです。対応表を作るより、生成物を外部に出す業務だけを洗い出すほうが早い。

影響が出るのは、AIの生成物をそのまま納品物や公開物にしている会社です。デザイン、記事、動画、資料。ここに当たるなら、プロンプトの記録だけは今日から残しておくといいです。

まとめ

  • 対象は生成AI開発者と提供者。社内限定・受託の一部・研究段階は原則として外れる
  • 生成した本人が、学習データの取得元を事業者に照会できる。プロンプトの提出が必要
  • その照会は訴訟目的では使えない。争う前の事実確認の窓口
  • 法的拘束力はないが、届出一覧が公開される。ツール選びの材料になる
  • 使う側の実務は「プロンプトを残す」から始めるのが現実的

出典

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