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生成AIの「プリンシプル・コード」原文を読む 自社が対象かの判定4問と、使う側に増えた窓口

政府が8月25日、生成AI事業者向けの「プリンシプル・コード」を公表しました。報道の見出しは、どれも「事業者向け」で止まっています。ただ原文14ページを読むと、AIを使う側に関わる話が2つ入っていました。

ひとつは「自社は対象なのか」の線引き。もうひとつは、利用者に増えた窓口です。順に見ていきます。

まず、何が決まったのか

正式名称は「生成AIの適切な利活用等に向けた知的財産の保護及び透明性に関するプリンシプル・コード」です。中身は3つの原則にまとまっています。

  • 原則1:使っているモデルや学習データの概要を、自社サイトで公開する
  • 原則2:権利者からの開示要求に答える
  • 原則3:利用者からの開示要求に答える

大事な前提が2つあります。まず法的な拘束力はありません。原文には「法的拘束力を有する規範ではない」と書いてあります。次に、やり方が「コンプライ・オア・エクスプレイン」です。原則を実施するか、しないならその理由を説明する。この二択を求める方式です。

受け入れを表明した事業者は、内閣府知的財産戦略推進事務局に届け出ます。届出のあった事業者は一覧で公表される予定です。日本に本店がない海外の事業者も、日本向けにサービスを出していれば対象になります。

自社は対象なのか 原文から作った判定4問

「AI事業者向け」と聞くと、自分には関係ないと思うところです。ところが原文の定義を読むと、線はもう少し手前に引かれています。原文の記述をそのまま4つの質問にしました。

Q1 そのAI、外部に提供していますか

社内で使うだけ、あるいは研究開発だけなら対象外です。原文に「公衆への提供を行っておらず、研究・開発を行っているにすぎない者は、生成AI事業者に該当しない」とあります。ここで多くの会社が外れます。

Q2 自社のデータだけで作ったAIを、自社と自社の顧客にだけ出していますか

これも対象外です。原文はチャットボットを例に挙げて、該当しない典型例として書いています。条件は「そのデータのみに基づき生成を行うよう構築されている場合に限る」こと。社内マニュアルだけを読ませた問い合わせボットなどが、ここに入ります。

Q3 汎用のAIを組み込んで、誰でも使えるサービスとして公開していますか

ここが盲点です。該当し得ます。原文は、汎用AIのライセンスを受けて業界特化のサービスを作り、複数の会社に提供する例を挙げ、それは対象だとしています。

ただし救いもあります。対応が求められるのは、自社が付け足した部分に限られます。土台の汎用AIについては、その開発元が原則を守ることで担保される、という整理です。

Q4 出てくるのが、統計や推論の結果だけですか

それなら対象外です。原文は「既存の著作物の創作的表現を直接感得することができない生成物」「意思決定に資する統計的データ、推論結果等にとどまる生成物」が極めて高い頻度で出るものを、対象から外しています。需要予測や与信スコアの類は、ここに当たりそうです。

実感としては、ほとんどの中小企業はQ1かQ2で外れます。引っかかるとすれば、自社サイトに一般公開のAIチャットを置いた会社です。心当たりがあるなら、原文の3ページ目までは目を通す価値があります。

使う側に、窓口が1つ増えた

報道が一行で流している原則3が、実は利用者側の話です。

生成AIで画像などを作った人が、あとから似た作品をWeb上で見つけたとします。そのとき事業者に対して、そのURLのドメインが学習データの収集対象に入っていたかを聞けます。これが原則3です。

ただし条件が3つあります。原文から抜き出します。

  1. 自分が作った生成物と、そのときに使ったプロンプトを示すこと
  2. 回答の利用目的を示し、その目的以外には使わないと誓約すること
  3. 照合したいURLと、開示を求める理由を示すこと

ここに落とし穴があります。②の誓約には「訴訟提起、調停申立て、ADRの申立てに用いる目的で利用しない」が含まれています。つまり原則3は、裁判の材料集めには使えません。争うつもりなら、権利者として原則2の側に立つ話になります。

正直に言うと、原文14ページを通しで読むのはしんどい作業でした。ただ、この「訴訟には使えない」という一点は、ニュース記事をいくら読んでも出てきませんでした。読む価値があったのは、ここだけと言ってもいいくらいです。

小さな会社が今週やるなら、2つだけ

1つめ。AIサービスを選ぶときのチェック項目に1行足す。「学習データの開示を出しているか」です。近く受入れ表明の一覧が公表されます。

ただし期待しすぎない方がいいところもあります。原文には、事務局は届出の内容を審査しないし、第三者からの照会にも答えない、と明記されています。一覧は答え合わせではなく、入口です。

2つめ。社内ルールの根拠として使う。原則1には、事業者が利用者に対して「生成物が他者の知的財産権を侵害するものと考えられる場合には、これを利用すべきでない旨を周知する」という項目があります。社内で生成AIの利用ルールを作るとき、根拠のある一文はありがたいものです。政府文書に同じ趣旨が載っている、という事実は使えます。

過度な期待も、無視も、どちらもずれる

法的拘束力はありません。届け出ない事業者を責める話でもない。原文にも「開示をしないという一事のみをもって、当該生成AI事業者を直ちに批判することは慎むべき」とあります。

一方で、AIサービスを選ぶときの材料が1つ増えたのは事実です。使う側にとっては、それで十分な意味があります。

自社サイトにAIチャットを置いている。もしそうなら、今週のうちに原文の3ページ目まで読んでおくのが安全です。

出典

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